トマトケチャップ開発秘話(6)究極の旨味ケチャップ!!
<以前の記事> 開発秘話(1)今帰仁産トマトとの出会いと農業の課題 開発秘話(2)企画へ 開発秘話(3)自宅で試作

日本人が発見した「うま味」は、主にグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸などの成分から生まれます。
トマトにはグルタミン酸が多く含まれます。また玉ねぎにもグルタミン酸は含まれます。
うま味は別のうま味成分と重層構造になると、更に美味しくなる事が分かってます。
最近のラーメンがダブルスープやトリプルスープなど、野菜や肉や魚介からのうま味を多重化させてるのが良い例ですね。
ラーメンと言えば「ラーメン発見伝」という漫画が好きでして。
その中の登場人物、芹沢は、主人公のライバルとして登場するのですが、かなりいい事を言ってくれます。
曰く「新しい何かとは、構造を疑い破壊することなくしては生まれないのだ!」
曰く「ラーメンは伝統料理と違い、セオリーもマニュアルもない。"常識"にとらわれているようなら、まだまだだな。」
考えてみれば、僕は「新しいトマトケチャップ」を作り出そうとしています。
そこに構造を疑い、破壊する事は、ある種必然。
そう。トマトケチャップは伝統料理とは違うのです。
以前、トマトケチャップの歴史にも触れましたが、元々はマシュルームケチャップがケチャップだった訳ですから、トマトケチャップが登場した時には、それこそ 「何ィ!!あの赤いトマトをケチャップにするだとっ!?」 という異論もあったかも知れません(笑)
「トマトケチャップはこうでなくては!」という先入観をあえて捨てて考えます…。
元々ケチャップは「マシュルームケチャップ」だった訳ですし…という事でグアニル酸が入っている椎茸の出汁を加える事にしました。
幸いな事に、今帰仁村は実はキノコの生産も盛んです。
今帰仁産の椎茸を買ってきてトマトケチャップに加えた所、結構な美味しさ。
しかし、よくよく調べてみると生の椎茸よりも、むしろ乾燥椎茸の方が良い事を知り…さらに冷水5度で出汁を取った方が良い等の知識を得まして(インターネット、本当に便利!!)
既にたっぷりとトマトからグルタミン酸は入っていて。椎茸出汁でグアニル酸も足され、旨味は二重構造に。これでも十分美味しいし、新しいケチャップではありましたが。
イノシン酸…鰹節の出汁をどうしようか?
椎茸はまだ良いのですが、鰹節の出汁を入れるという事は「動物性のものが入る」という事で、必然的にビーガン(ベジタリアンの中でも最も厳しい人達)の人は食べられないトマトケチャップになります。鰹出汁の入ったトマトケチャップは、単なるトマトソースではないのか?トマトケチャップと言えるのか?少々悩みどころです。
ただ、鰹節も今帰仁村のお隣、本部町の名産で県内唯一の鰹節工場もあります。
すぐ隣に鰹節工場があるというのは、何かの導きのような気持ちさえしてきた部分もあり。
「まぁ、試すだけ試してみよう。」と、鰹出汁を加えた旨味3重構造のトマトケチャップを試作してみることにしました。
食べた瞬間…迷いは消えました。
何これっ!超うまいっ!!
旨味成分重ねてる訳ですから、うまいのは当たり前ですが、やはりうまい。
こんなうまいトマトケチャップは食べたことない!!。
そして…
おそらく世界初!!(自称)
で、更に欲張って、同じく旨味成分の出るもの…例えば昆布出汁や、チキンの出汁…あるいはアゴ出汁なんかも考えましたが…
そこで、はたと少し足を止めました。
試行錯誤は最初の頃、色々入れてみる「足し算」で考えていました。
あれを入れてみたり、これを入れてみたり。
それを続けてると、だんだんとベーシックなものは見え始めてきました。
旨味成三重奏の試作をしながらも試作を重ねて「あったらあったで、まぁ良い」くらいのものは入れない「引き算の試行錯誤」の段階へと移りつつあったかたです。
引き際も肝心。
旨味三重奏でひとまずは決定としました。
実際、旨味三重奏のトマトケチャップをソーセージにつければ、肉の旨味とハーモニーになって、めちゃくちゃ美味い。
旨味三重奏と月桃。
大きく二つの味を発見した僕は、味以外の商品化に向けても動き出します。